ありそうでいい絵が無い、尻はしょり

志ん生の口述自伝「びんぼう自慢」を読んでいる。そりゃあもう、読みながらひょえーとびっくりしたり、ゲラゲラ笑ったりで、はた目から見れば読んでいる私は相当うるさいだろうね。その本の中でビンボーな若い頃の志ん生が、電車賃惜しんで歩いている様子の描写がある。
「尻ィはしょって、羽織を首ッ玉へゆわえてドンドン歩く。下駄なんぞ減ると大変だてんで、腰ィゆわえて行く。」
これって、どんな格好なんだろ。明治から大正にかけての頃の話だと思うんだけど、着物をお尻のところでからげてはだしで歩いてまあ平気だったんだね。下駄は鼻緒に帯を通してぶら下げてたのかな。
尻っぱしょりという言葉にビックリしたけど、お尻が丸見えってわけではなかったみたい。たくさん歩いたりする時は女の人もよくしていたみたいだけど、今はとってもできないね。風が吹いてすそから長襦袢がちょっと見えるだけでも、通りすがりの人にビックリされることあるもんね。これは見えてもいいもんなんだってば、と通りすがる人には言えないし。
志ん生の奥さんが、「家では腰まきひとつ」で居たって描写もよく出てくる。これもいくら暑くっても、今ではできないね。宅急便のお兄さん、腰抜かしちゃうよねえ。